サル
1986年、京都大学人類進化論研究室の卒業研究で、嵐山のサルの土食い行動について調べました。土はミネラルを含む、消化を助ける、などの効果が予想されていますが、なぜ決まった場所の土を食べるのでしょう?食べない場所と成分の違いがあるのでしょうか?結論は出ていないのですが、どうも社会関係が影響するらしいのです。社会関係が物質でわかるの?後に、京都大学霊長類研究所で、遺伝子による父親の判定の研究を始めるきっかけになりました。現在の、性格を決めている遺伝子の研究へとつながります。
DNA多型解析による霊長類の父子判定
DNA多型解析により、ニホンザルをはじめとする霊長類の父子判定とそれに基づく社会行動の解析を行い、高順位雄が必ずしも子供を多く残していないなど、霊長類における社会構造の意味を問い直す事実を明らかにしてきました。
サバンナに住むパタスモンキーは、オス同士の戦いに勝ち残った1頭のオスと、複数のメスとで群をつくっています。DNAを調べて父子判定をした結果、群のオスはすべての子供の父親にはなっておらず、戦いに負けたオスにも父親になるチャンスがあることがわかりました。
性格遺伝子の進化
ドーパミンやセロトニンなどの脳内神経伝達物質の受容体や輸送体のDNA多型が、ヒトの性格と関連すると言われています。進化過程においてDNA多型が生じてきた様子を調べています。また、身近な動物であるイヌについても、性格に関与する遺伝子を探しています。
セロトニン分子(写真)の輸送体遺伝子のプロモーター領域の多型は、不安を感じやすい傾向と関係があると言われています。
ウシ
1993年より、畜産技術協会附属動物遺伝研究所で、霜降り肉の遺伝子の探索に携わりました。霜降り(脂肪交雑)は量的形質で、環境や多数の遺伝子が関与する複雑な形質です。複雑さという点では、サルの行動と共通する部分もあります。この研究は、後に岐阜大学でも続けました。
黒毛和種牛の個体識別システムの構築
DNA多型解析によって、これまで血液タンパク質の多型では判別不可能であった種雄牛精液からの簡便かつ精度の高い個体識別および父子判定法の方法を確立できました。
黒毛和種牛の霜降り遺伝子の探索
黒毛和種牛の肉質の中でも特に重要な霜降りの形成には、筋肉中で脂肪組織がよく発達することが必要です。黒毛和種牛の培養脂肪前駆細胞を用いて、分化に関与する遺伝子の探索と解析を行っています。
よい霜降り肉を作るためには、育て方も重要ですが、遺伝的な影響も大きいのです。
トリ
1997年、岐阜大学農学部(応用生物科学部)で、ウズラやニワトリの羽毛色遺伝子の研究に携わりました。世界中でゲノムプロジェクトが進みつつあるときで、日本人が家禽化したウズラのゲノム解明に、参加することができました。
鳥類の性判別
鵜飼いに用いられるウミウなど、鳥類には見かけで雌雄を判別しにくい種が多くあります。性染色体の遺伝子を用いて、鳥類の各種で性判別を行っています。
鳥類の性格関連遺伝子
哺乳類で報告されている性格関連遺伝子と行動との関連を、鳥類でも解析しています。
鳥類の羽毛色遺伝子の多様性
ガーナの在来鶏の遺伝的多様性
イヌ
1998年、岐阜大学で、イヌの性格関連遺伝子の研究を開始しました。イヌは同じ種ですが、品種ごとに見かけも性格も大きく違っており、性格は遺伝することが実感できます。さらに同じ品種でも個体差が大きい。これも遺伝子の影響?
イヌの性格遺伝子の解析
ヒトにおいて新奇性を好む性格や、不安を感じやすい性格に関連する遺伝子多型が報告されています。ヒトに最も身近な動物であるイヌでは,親しみやすさや従順性などの行動特性は大切ですから,猟犬,番犬,家庭犬などの用途に応じて品種改良が行われた結果,品種ごとに特徴的な行動特性がみられます。社会の中でのイヌの役割は,家族の一員として,また盲導犬,麻薬探知犬,災害救助犬などのサービスドッグとして,最近ますます重要になってきました。イヌのドーパミン受容体遺伝子も品種によって長さが違っています。将来,遺伝子によってイヌの行動特性が見分けられるようになれば,イヌの適性にあった飼い方ができ,イヌと一層よい関係を築くことができるかもしれません。そこでイヌにおいて遺伝子の型と行動特性との関連を調べています。